アクリル系人工大理石の美しさは“最終研磨”で決まる ― 意匠性と清掃性を引き出すプロの技術
2025/11/27
アクリル系人工大理石は、住宅・商業空間のカウンターや洗面台、什器などで広く用いられている高品位素材です。その特長は、一体成形による継ぎ目のない美しさと、柔らかな手触り。しかし、この素材の真価を引き出すうえで欠かせないのが、施工後の「最終研磨」です。プロの現場では、美観・機能性の両面を仕上げで決めると言っても過言ではありません。本記事では、研磨の重要性と具体的な効果、工程、注意点について解説します。
なぜ“研磨”が重要なのか?
アクリル系人工大理石は、そのままでも高い意匠性を持つ素材ですが、実際の施工現場では複数の部材を接合(シームジョイント)し、現場で形を整える必要があります。そのため、接合部をなじませ、製作時に生じた表面のムラを整える“仕上げ研磨”が不可欠となります。これにより、製品本来のなめらかさ、統一感、そしてメンテナンス性を最大限に高めることができるのです。
研磨がもたらす4つの効果
① 接合部(シーム)を“見えなくする”
アクリル系人工大理石は、シームジョイントによって長尺・複雑な形状にも対応可能ですが、接合後に目地が目立ってしまっては台無しです。機械研磨と手作業を組み合わせることで、段差をなくし、まるで一枚板のようなシームレスな外観を実現します(※色柄によっては多少目立つ場合があります)。
② 表面の“ムラ”や“テカリ”を除去
製作・施工中にどうしても発生する擦れ、光沢ムラ、細かい傷は、番手を変えて段階的に磨き上げることで 滑らかに整えることができます。これにより、マット、半ツヤ、ツヤ仕上げといった好みの仕上げ感を自由に選べます。
③ 手触りと質感の演出
研磨の方法を変えることで、さらりとしたマット調から、しっとりとした高級感あるツヤ仕上げまで多様な表情を出せるのがアクリル系の強みです。意匠性を重視する商業空間では、設計意図に合わせて質感を演出できる点が大きな利点です。
④ 傷の再生(リペア)にも対応
軽微な傷や汚れであれば、再研磨によって初期の美しさを取り戻すことが可能です。研磨による“復元力”が高いため、長期間使用しても美観を保ちやすく、清掃性・メンテナンス性の面でも非常に優れています。
研磨工程と使用ツールの基礎知識
研磨作業は、粗仕上げから順を追って番手を細かくしていく「段階研磨」が基本です。一般的には、#180〜#400のサンディングパッドを使用し、最終的な仕上げには#800〜#1500の仕上げ用バフやコンパウンドを使います。
使用するツールは、オービタルサンダーやポリッシャーなどの電動工具に加え、細部は手作業で丁寧に仕上げます。均一な圧力と動作スピードの調整が美しい仕上げの鍵です。

注意点として、濃色系のカラーは研磨時に色ムラが出やすく、プロの経験と技術が求められます。 特に黒やネイビーなどは光の反射でムラが目立ちやすいため、熟練の研磨職人による丁寧な作業が不可欠です。
まとめ
アクリル系人工大理石の最終仕上げにおいて、“研磨”は単なる作業工程ではなく、 「製品の完成度を左右する演出」と言えるでしょう。美観、清掃性、耐久性を高次元で両立させるためにも、研磨の知識と技術はプロユーザーにとって欠かせない要素なのです。
